ようやくswitchという遊びやすいゲームハードで遊べるようになったMOTHER3、配信開始直後から遊び、3/9にクリアしました。
このゲームは、かなり色々なものがプレイヤーに委ねられていることもあり、人によって様々な感想があると思います。そういうのを皆で共有したいよね、ということで、自分もストーリーの感想を書きたいと思います。
もちろん、MOTHER2とMOTHER3のネタバレを含むので注意してください。
あと、この記事では「子どもの視点」という言葉を何回も使うのですが、作品が「子どもの視点」であるということは「子ども向け」という意味ではありません。
また、子どもが主人公であることは、MOTHERにおいては子どもの視点の物語であることを表現する手段として用いられていますが、そのようなことだけを言っているわけではありません。
あくまで比喩的な意味での「子ども」であり、なんかもっと良い表現があればそっちを使いたいところなのですが、今のところは無いのでこれを使います。
要するに、スタンドバイミーの映画とか、このゲームとか、ポケモンにあるものですね。
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ゲームがむずかしい!?
ストーリーの前に、まずMOTHER3の大きな特徴であるRPGとしての難易度の話をしたいです。
ゲームとして2と比べて差があるところって、まあシリアスなストーリーが一番ではあるけど、その次にこれが来るんじゃないでしょうか。
まず、このゲームの難易度は2024年にはもうほとんど見られないレベルと言っていいでしょう。
この手のターン制RPGだと、最初の方が難しいゲームとか後半が難しいゲームとかは結構ありますが、ここまで最初から最後まで難しいことは早々無いでしょう…
最序盤から強い敵相手のバフ・デバフが必須だったり、倒し方がかなり限られてるボスが多く出てきたり、そしてなにより、現代のRPGでは珍しいいわゆる「デスエンカ」(出会ったらまともに戦うより「にげる」を選択するのが正解になるようなザコ敵)が最序盤から数多く出てきたり……
このゲームってバフを3回積んでもオフェンスやディフェンスは1.4倍にしかならないらしいです。それでも十分に頼もしい技だったというのは、それだけ敵が強かったということだと思います。
こういうことって、実況だけ見た人にはあまり伝わらないかもしれないですが…やると本当に難しいんですよね、このゲーム。
この難易度は正直、「おとなも こどもも おねーさんも。」と言うには結構難しいな……とは思いましたが、私個人としては、ターン制RPGの詰将棋的な感じが結構好きだったので、やりごたえがあって楽しかったです。
これまでのmotherシリーズ同様かそれ以上に、それぞれのボスに個性豊かなギミックや攻撃が作られており、それに上手く対処していくというのは面白かったです。
ドラムシステムを活かしてある程度強い全体攻撃が相手から飛んでくるのも、難しくはありましたが良い塩梅だと思いました。
あと、個人的には、これはMOTHER3のシリアスな世界観や、「元々強くなかったけど誰かを守るために強くならざるを得なかった子供の話」というのにも結構合ってたと思います。
実際のところどれくらいそれを意図して設計されたのかは分かりませんが…
糸井さんやブラウニーブラウンに聞いてみたい。
それから、システムの話ということでここで書きますが、システム面は本当にめちゃくちゃ洗練されててすごいですよね、MOTHER3。戦闘のテンポは死ぬほどいいし(それに合わせたエフェクトデザインとかもすごく好き)、それ以外も現代基準だよなと感じます。
唯一強いて言えば、アイテムやPSIの細かい説明文が見れないのだけちょっぴり残念でしたが、でも実用性的にはカーソルを合わせただけで説明文が見れたほうが絶対よくて、その代わりに「せつめい」コマンドが省かれたのはまあ仕方がないことでしょう…。
2と違うところ色々
ここからはストーリーの話です。
このゲームについて皆が共通して言うのはやっぱり、「2とストーリーの毛色が違う」ということだと思います。
それについての個人的な感想としては……
(特に最終盤に出てきた)ちょっと大人なバックグラウンドとか、色々なシリアスな設定とかを全て満足に活かせていないように感じたところも少しはありましたが、「MOTHERシリーズ最後の作品」という立ち位置として、過酷な状況に置かれた子どもの視点で「悪い子ども」の心のまま大人になったポーキーと決着をつけ新しい未来を切り開くというストーリーは、見れてよかったなと思います。
やっぱり、MOTHERシリーズが4作、5作とか続いていれば、その間にはずっと子どもの視点の子どもの冒険、というものを見たかったという気持ちはありますが、2でそれを一旦一通りはやりきったのを見て、最終作の3がこれ、というのは良いな、と思います。
もちろん糸井さんが最初からこれを最終作にするつもりでこのストーリーを構想したのかとかは知りませんが、2024年に結果だけを見た者としてはそういう感想です。
2と3のどちらが好きか、というのは結構難しいところですけどね。
3は色々なことを得られる作品だけど、2というゲームが存在したこと(2で一旦やり切ったのを見たこと)を前提としているよな、という意味では2があってこその作品ですし…どっちが上とは言いにくいです。
ただ、3が面白く、良いゲームだと感じられた理由には、やはり、MOTHER2の思想や世界観は色々なゲーム、何といっても、とりわけポケモンがかなり忠実に受け継ぎ、今も良い作品を出し続けているということもあった気がします。
ポケモンは「子どもの視点の子どもの冒険」を提供し続け、一時期はそれは「子ども向け」と言われることもありました。しかし、ゲームを洗練させながらそれを出し続けたことによって、今では広く、世界中の大人にも子どもにも、社会にも親しまれるようなコンテンツになっていて、私自身もとても楽しんでいます。
そういう時代になった今だからこそ、それとはまた違った方向性に進んだけど、根底に同じものが流れているMOTHER3を面白く、新鮮に感じられたのはあるかもしれません。
それじゃあ2006年の環境は今とは違ったのか同じだったのか、とかは別に何も詳しくないし、自分の感想とは関係ないのでここではその話は省略します。
「あの設定やストーリーはなんの話だったのか」という考察を少しだけ書く
やっぱり、自分の中でも、あまりにも要素が多すぎて理解がまとまりにくい部分はあるので、重大な要素について少しずつだけ書いておこうと思います。
シアワセのハコや、その他諸々のタツマイリ村の現代化
→ゲーム自体が文明の利器である以上、単なる文明のアンチではないと思います。
幸せの考え方を他の人たちに押し付けることの怖さが感じられました。
今作におけるポーキーとの対決について
子どもが対立する相手が、悪い大人とか悪い宇宙人とかではなくて「悪い子ども」なところが好きです。
「悪い子ども」としてのポーキーは、私は
・誰もが普遍的に持っているような心のうち、思いやりとかの部分の真逆
・普遍的な心のうち、「自分が楽しいことをやりたい」という気持ちとか、遊んだりふざけたりするような気持ち、強さとか分かりやすいものを追い求める気持ちだけを極め、(年齢的な意味での)大人をも凌ぐ強さを手に入れた存在
だと思っています。
その戦いがシリアスなストーリーや世界観の中で展開されるのも、「子どもの視点を持っているが、身近なものへの危機に立ち向かうために(心が強いということや、せかいの真実など、色々な事情を知るという意味での)大人にならざるを得なかったリュカ」と、「子どもの気持ちのまま、(力が強いということや、無慈悲という意味で)大人の権力を手に入れたポーキー」の対比をやりたかったのではないかと思います。
私は好きです。
ぜったいあんぜんカプセルのこと
糸井
だから、おもしろさと、迷惑と、
いろいろ混ざっている。
そういうポーキーが最後の最後に、
なんだろうな、罰でもあり、
最高名誉でもあり、っていう場所に
行かされちゃったんですよね。リゼ
「最高名誉」。糸井
うん。だって、あれ、
いってみれば神じゃないですか。
だって、滅びないんだからね。
(中略)
自分が選んじゃったんですよね。
それは、判断のミスだったともいえるけど、
正解はなんだったかわかんないわけで。
引用元:
第7回 下品でクリエイティブな人 | 『MOTHER』の気持ちでいれば。 コアラさんとリゼ・ヘルエスタさんと糸井重里。 | コアラ✕リゼ・ヘルエスタ | ほぼ日刊イトイ新聞
判断ミスではあったかもしれないけど、自らの意思でぜったいあんぜんカプセルに入ってしまったポーキー。
ゲーム中では、アンドーナッツはかせが
「あるいみ かれの のぞみだったのかも しれない。わたしの いっていることは まちがっているかな?」
と聞いてくるんですが、「いいえ」を選ぶと
「そうかなあ。まちがっているような きもするなー。」
と、めちゃめちゃ雑な感じの態度なんですよね。
この大事なところで適当というか雑に子どもに重大な選択をぶん投げてくる感じ、めっちゃ2からのアンドーナッツはかせだなあ、と思うんですが、でもやっぱり、ここで、このことが起こったその時にプレイヤーに問うのは好きです。やっぱりこういうことは、よくよくじっくり考えて答えを出すのも悪くはないかもしれないけどその時最初に自分がどう思ったかということも非常に大事な気がします。
それで、結局ぜったいあんぜんカプセルって何なんだろう…ということについて私が思ったことをすごく簡単にまとめると、
・やっぱり人は神になったらダメだと思う。
「子どもらしい」欲望の延長線上だったのかもしれないけど、それは結果として一番「子ども」という概念からかけ離れた存在だと思う。
それが「子どもの視点」の作品の敵の末路なのは、良いな…
・神になるというということは、MOTHERシリーズを通した主題である「人間らしさ」の逆でもあると思う。
コミュニケーション、対話をすることとか。
意図したことかは分からないけど、最後に戦闘メッセージウィンドウのままリュカとクラウスが抱きしめ合うかめんのおとこ戦と、強制的に戦闘が終了するポーキー戦は対照的。
ポケモンやUNDERTALEほど、「戦闘が対話」という文脈がすごくあるゲームでは無いけど、でも多少はあるよね、このシリーズ。初代MOTHERでも戦闘画面のまま「うた」を歌うわけだし。
・あとは単純に、「ぜったい」を求めたらこうなる(別な視点から見ても「ぜったい」になる、何か重大な可能性を閉ざしてしまう)という示唆でもあると思う。先ほど引用した糸井さんらの対談でも、少しそのような話をしていた。
…という感じです。なんだか結構長くなってしまいましたが……
「せかいの おわり」とノーウェア島、そして私たちの「せかい」のこと
果たして、一度滅んだ「せかい」から抜け出した人々がノーウェア島で人生をやり直す営みは、今後は滅ばずにやり続けることはできるのでしょうか。
ポーキーはこれに対して、
「にんげんという いきものは なんどでも おなじように わるいことや ばかなことをして じぶんたちの くびを しめあうのさ。」
と発言しています。
これについては、このゲームの中で考える材料はあまり無いのですが、個人的な考えとしては、ここは割とポーキーの言う通りなのではないかと思います。
リュカなどの新しく生まれた子どもたちは「ものがたり」の役が与えられているわけでは無いように見えるので、もしノーウェア島での営みが何事もなく続いていっていたなら、次の世代の人たちは自由にふるまい、タツマイリ村の人口は恐らく増えていき、最初に作った「ものがたり」は徐々に薄れていくことでしょう。
その時に、狭い島で完全に永遠に平和な村を維持し続けるのは難しいと思います。
まあそもそも、人間らしさの面で言うと、「ものがたり」で作られた村で生きるという考え方自体、本当にいいのかな…というのもありますよね。
それでは、最後に恐らくリュカが作ったと思われる新しいせかいも、ずっと、永遠に続くことはあるのでしょうか。そして、私たちプレイヤーがいる世界は……。
特にゲーム内にそのヒントは無いのでそれは不明ですが、もし、いつか滅ぶものだったとすれば、人は、私たちはどうすればよいのでしょうか。
…リダが長い話をした後に、リュカが針を抜くことについて、こんなことを言います。
なにもかもが
おわるとき かもしれないが
あたらしい ゆたかななにかが
はじまるときかもしれない。
そうしたい・・・じゃないか。
そうしたい・・・じゃないか。
って、凄いテキストですよね。結局リュカに針を抜かせることが、まあ何もしないで破滅を迎えるよりは良いことではありそうだけど、本当に素晴らしいことが起こるのかどうかはリダも誰も分かっていない。それでも、
「そうしたい・・・じゃないか。」
と言って子どもにその役割を託すのはすごいなあ、と思います。
なんか…これがMOTHER3というゲームの大きなテーマだったんじゃないかな、という気がしています。
今いる世界が、ずっと破滅を迎えずに続いていくのかどうかなんて分からない。それでも、新しい豊かな未来を期待したい。そうしたいじゃないか。
…という話だったのかなと私は思いました。
このゲームの最後に、私がこのゲームの中で一番好きな言葉があります。
そっちの せかいは
どんなふうだい?
こっちは なんとか
やっていけそうだけど・・・。
そっちは だいじょぶかい?
そっちの せかいのこと。
カスタニエさん
よろしくね!
……やっぱり、世界で生きていると色々なことがあるわけで、完全に何事もなく皆が生き、世界が続いていくというのは難しいと思います。
でも、それでも、
こっちは なんとか
やっていけそうだけど・・・。
そっちは だいじょぶかい?
と言われて、これからも「はい」と答えられるように生きられたら、そういう世界に生きられてたらいいな、と切に思いました。
総括
基本的には「2と違うところ色々」で書いた通りですが、とにかく、MOTHER3は、2からのテーマをある程度継承しつつも、より深いところに行った作品として、好きな作品でした。
特に、「良い子どもと悪い子どもの戦い」の話や、最後の「そっちのせかいは どんなふうだい?」がとても印象に残りました。
最後のMOTHERシリーズとしてこれを遊ぶことができて良かったです。ありがとうございました。
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