自分が好きな漫画「まちカドまぞく」が(連載は再開したけど)まだしばらく単行本が出ないのと、そもそも3月くらいから漫画を読んでなかったということで、久しぶりに漫画が読みたくなり、この作品を購入しました。
今回の記事は、皆さんも興味があれば是非この漫画を読みましょう、という話なので前半ほぼネタバレ無しでお送りします。
(まあもちろん、感想記事である以上は、題材の話とか本当に何も知りたくない人は是非何も見ないで読んでみてください。)
2023/7/21追記:記事の最後に「『マグロの掟』について少し真面目に考えてみる」を追記しました。(ネタバレ部分)
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(きららに関して、というか漫画に関してめっちゃにわかな人の文章なので、そこはすみません……!!)
あらすじ(概要)
マグロ好き女子高生みさきの夢は、いつか自分でマグロを釣り上げ、一匹丸ごと食べること。
そんなみさきはある日、日課の堤防釣りで、見事大きなキハダマグロを釣り上げる。
そのマグロはしかし、少し目を離した隙に、人間の少女になっていたのだったーーー(きららベースより)
一見するとトンデモあらすじの出オチギャグ漫画……のようですが、この作品はそれとは一味違います。(4コマらしいギャグの面白さもたくさんあるけど)
「きららベース」で何話か無料で試し読みができ、また、無料範囲が拡張されることも多いようです。
単行本は今は1巻まで出ています。
異種族共生、それは今なお、こんなにも難しい
異なる価値観を持った人や生きものと共に生きること、分かりあうこと。
それは、私が小学生の時には、取り上げられる場合は大まかな概念(変わった人をのけものにしたりしないでね、とか)が中心(多め)だった印象がありましたが、それから10年ほどが経ち、今や、非常に多くの創作物で、様々な角度、シチュエーション、モチーフを使って取り上げられる題材になりました。
そして、この作品も、その題材に正面から向き合っている作品の一つといえるでしょう。
そう言うと、もうやられ尽くされた題材、ともいえるかもしれませんが、個人的にはこれは(少なくとも当分の間は)何回やっても良い題材だし、色々な方面からやって欲しい題材だと思っています。
この題材が、現実での全人類の喫緊の課題、というのはもちろん理由の一つですが、何といってもこれは、その人、そのシチュエーションによって「答え」が違うお話だと思うんですよね。
広くとれば普遍的なことも言えるけど、具体的な、この人とこの人との関係、っていったら、それはもう「普遍的な正解」なんて無いんですよね。と私は思います。
それにまあ、やっぱり、たかが10年くらいですからね。まだまだ、とっても難しい課題なのは、ある意味当たり前といえるでしょう。それは、現実でも、本や創作の世界でも同じでしょう。だから、これからも、もっともっと大切になっていく概念なのかなと思います。
ヤバい人(マグロ)と生活するの、学校に行くのって、大変!!
ちょっと真面目な話になってしまいましたが、この作品は基本的にとても明るい作品になっています。
主人公のみさきと同居するマグロは、とにかく、傍から見ればヤバい人です。
事あるごとに魚の姿のときのことを思い出したり、みさきに(物理的に)食べられようとする彼女は、町や学校の人に驚かれてばかり。
そこらへんは、驚きながらも楽しく描かれています。みさきにとっては、全体的に大変なことばかり続きますが……
マグロならではの思想や価値観の違いは非常に大きいのですが、それが明るい形で描かれてるのは楽しいです。
ここからはネタバレです。
より細かい感想(ネタバレ)
楽しみながら読み進めてはいたものの、どこまでこの題材を(明るい面白さ的な面でも真面目な面でも)突き詰めるのかなー……というのがやっぱり気になっていました。
…言うまでもないですが、最後2話はめちゃくちゃ良かったですね。
二人が少し"分かり合って"、距離が縮まっていくのではなく価値観の断絶が明確になる、という。
ここまで価値観が違ってて、ここまで学校や街中でヤバいムーブをしてドン引きされる人(マグロ)と同居してたら、それはそうなるでしょうが、「それはそうなった」のをすごい明確に描写したのがすごい良かったですね…
でも、現実の人と人との関係でそれって、あり得ることなんですよね。
自分に損害を与えようとしてる人じゃない。むしろ一緒にいて良いことがある人かもしれない。だけど価値観がかけ離れてる。
こういう話って一人一人のケースによって「答え」が違うものだよね、というのをさっき書きましたが、みさき達がどのように、また、どんな「答え」を探しだしていくのかがとても楽しみです。
…というか「一人一人違うよね」っていう話を なぎさがある程度触れてるのすごくない?結構すごいと思います。
「マグロの掟」について少し真面目に考えてみる
この項目も、基本的にはネタバレの項目です。
(個人的な意見が強い項目、かつ大分メタ読み的な項目なので、見たい人が見てください。)
このお話の世界の「マグロの掟」を見てみると、「自分を他の種族のために犠牲にする」という思想はこの世界の私たちには馴染みが無く、それと、恐らくは読者の多くと近い思想で生きている みさき の思想を対比させるのは極端にも見えます。
でも…どちらかがどちらかの価値観に合わせざるを得ない状況になる(なってしまう)、という事は現実に起こりえることだと思うんです。
で、それってお互いがある程度納得できないまま行われば、ある種グロテスクな結果になってしまうでしょう。(なぜなら、どちらかが、元々自分を形成していたアイデンティティを捨てたり、自分が「悪い」と思っていることをやらないといけなくなったりするというのはその人の尊厳を根本的に傷つけてしまう可能性があるため。)
だから、その「グロテスクだよね」という部分を物理的にグロテスクな選択として表現したものがマグロの掟なのかなと個人的には思います。(まぐろが食べられてしまうという表現)
あと…個人的には、掟の話は多少、今後もやるのかな、と思います。
1巻のカラーページにあんなお話が出てきますし。
人と人、人と生きものが共生するのに、絶対相手の思想を全部知る必要は無いのですが、ただ、一つの手段、過程として、よりいっそう知ることにはなるのかなー、と少し思ってます。
それでは今回はこの辺で。
二巻も買います。